怒りの心理学
カウンセリングに来られる方は大体、心のいやな気分をなんとかしたいという思いでやってこられます。心におもくのしかかるうつ気分とか、常に心をちくちく刺してくる不安感などですね。
それに比べ、怒りの問題でカウンセリングに来られる方は、ちょっと違います。怒りを心に抱えることに対して、問題意識は結構低かったりします。というのも、元々怒りとは外向きの感情であり、怒りを抱えている自分が問題なのではなく、自分を怒らせた他の人や出来事が問題だと思いがちだからです。怒りの問題でカウンセリングに来られる方は、自分ではそれほど大きな問題だと思ってないけど、周りから散々言われたから来たというケースが多いですね
それでも、怒りは他の感情と同じく自然な感情で、私たちの一部です。ただ、この怒りという感情には、他の感情と比べるとなかなか激しく、破壊的な側面もあります。このブログでは、怒りの良い側面、怒りの危険な側面、怒りのコントロールの方法を紹介したいと思います。
怒りには、以下のような良い側面があります。
• 人間関係改善:こちらの心を傷つけるような言葉使いをよくする家族や友人がいたとします。人間関係を壊したくないから、全然気にしていないように振る舞い続けると、いつかその人間関係は壊れます。そのような時に、怒りの感情は、“これはいけない、こんなこと続けるわけにはいかない。何かしなければ”という相手に立ち向かう後押しをしてくれます。その結果、我慢をする人間関係から、オープンに意見を言い合える良い人間関係に改善していくことができます。
• 自己改善:別に悪い人ではないんだけど、いつも大声で話す同僚が苦手で、近くにいるとイライラする。このような場合、怒りにより、近くで大きな声を出されるとすごくストレスを感じる自分を発見することができ、そこから自分のニーズや必要なものを明確化することができます。
• 社会改善:歴史的に人間社会の改革は、怒りによって進められてきました。というのも、私たちは、社会的な不正や不平等に対して、怒りを持って声を挙げてきたからです。なので、怒りには、社会的な改革や進歩に貢献するという、凄まじい力があります。
• 健康改善:イライラを溜めると、心と体に大きく負担がかかります。逆に、怒りを表現することにより、そのストレスを発散することができ、心と体を軽くすることができます。
怒りには、以下のような悪い側面があります。
• 人間関係破壊:よい人間関係を育てるのには、多くの時間と努力が必要です。それに対し、人間関係を壊すのは、一瞬だったりします。怒りにまかせて、相手の心を深く傷つけるようなことを言うことによって、今まで築き上げきた人間関係を、一瞬で壊してしまうことも少なくありません。
• 自己破壊:怒ってやけになり、酒・ギャンブルに走ったりすることにより、自分の生活や自分自身を破壊してしまうことがあります。怒りにまかせてヤケ酒を飲んだり、多額の金をギャンブルですってしまった自分に頭が来て、さらに深く酒やギャンブルにハマるという負のサイクルに陥ることも多々あります。
• 社会破壊:そして怒りにより、無謀な運転や暴力行為など、社会的な規範や法律に反する行為に走ってしまうことがあります。その結果、社会的な問題や課題を悪化させ、社会全体を悪い雰囲気に陥れてしまいます。
怒りをコントロールする方法は、以下のようなものがあります。
• 呼吸法:深呼吸には、怒りの感情を落ち着かせる効果があリます。なので、怒りを感じたときには、意識的に深呼吸をすることにより、心と体の緊張をほぐし、冷静にものごとに対処することができます。
• タイムアウト:怒りは激しい感情ですが、長続きはしません。大体15−20分くらいで、怒りのピークは通り過ぎ、徐々に心は落ち着いてきます。なので、怒りが湧いてきた時に、ひとまずその場を離れて間をおくことにより、怒りによる破壊欲求を抑えることができます。
• 適応思考:怒りを感じた時には、“こいつは何て失礼なんだ”、“これは絶対許せない、思い知らせてやる”とか、怒り思考が頭の中に駆け巡ります。そのような時に、“いや、待てよ、ひょっとしたらこの人はこの人なりに理由があるかもしれない”とか“まあまあ今こっちが怒っても状況が悪くなるだけだ”とかいうように、視点や解釈を変えることにより、怒りの感情を変化することができます。
• 自己主張:怒りを感じた時に、手を出したり、大声を出すのではなく、言葉で自分の気持ちや意見を、攻撃的ではないがしっかりと伝えることで、建設的に怒りを表現することができます。
今回のブログでは、怒りの心理学について紹介しました。怒りは、自然な感情ですが、過剰になると自分や他人に破壊的な影響を及ぼすことがあります。怒りのメリットとデメリットを知り、怒りをコントロールする方法を学ぶことで、怒りを上手に使い、より良い人生を歩んで行けたら良いですね!