“ごめんね”:謝罪の心理学
医療従事者が、患者さんや家族の方に謝罪するのは良いことなのか、良くないことなのか、どう思いますでしょうか?
実はこれは、まあまあ長く続いている議論だったりします。
以前は、医療従事者が謝罪をすると、訴訟など大きな問題に発展してしまうことがあるので、謝罪はしないほうが良いという意見がありました。
しかしその後、適切な謝罪をすることにより、患者さんや家族の方の心が和らぎ、逆に訴訟されることが少なくなるという調査が発表され、やっぱり謝罪は良いんじゃないかという意見も出てきました。
最近では、SNSなどでの情報のすごい拡散力により、謝罪をしてもしなくても大炎上してしまうことがあり、謝罪の難しさが倍増しています。
でも本来、謝罪とは、訴訟や炎上を避けるためにするものではないですよね。それは自分の非を認めて、それを相手に“ごめんなさい”という言葉で伝える、という比較的単純なことです。でもやっぱりそれが難しいんですよね。
そして難しいからこそ、謝罪には強力な心理的効果があります。
一つ目は、人間関係を修復する効果です。“ごめんね”の一言により、自分の間違いを認めた上で、相手との関係を修復したいという意欲を伝えることができます。そこから和解のきっかけが生み出され、その相手と一緒に前に進む可能性を作り上げることができます。
二つ目は、自己成長です。謝罪するには、まず自分の非を認めることが必要です。なんといってもこれが難しいところですね。“まあお互い悪かったし”とか“これくらいは誰でもすることだから”とかいう言い訳やプライドが邪魔してしまい、無意識・意識的に自分の非から逃げてしまうのが人間の常です。逆にいうと、謝罪をすることにより、謙虚さや責任感など、人が成熟する上でとても重要なことを学ぶことができます。
以下は謝罪をするための、3つの実践的なポイントです。
1. 真摯であること:真の謝罪には、真摯な態度が大切です。あなたの言葉と行動が、自分の非に対する認識と後悔が反映されているかを確認しましょう。
2. 責任を取ること:言い訳をせず、責任を受け入れることもとても重要です。“ごめんね”の後に“でも. .”と続けると、謝罪のようで反論になってしまいます。
3. 聞くこと:謝罪した後、相手の気持ちを積極的に聞いてください。こちらの謝罪を一方的にまくしたてるのではなく、自分の言動が相手をどう傷つけたかを、しっかり理解するようにしましょう。
謝罪は、単なる言葉でもパフォーマンスでもありません。いくら頑張ってもミスをしてしまうのが人間です。謝罪とは、そんな私たちでも前に進んでいけるための、とてもとても大切な、癒しと和解をもたらすスキルです。後悔やプライドに邪魔されず、謝罪するべき時に謝罪をして、どんどん前に進んでいく人生を送りたいですね!