心の病気と心の健康
今回のブログでは、心の病気と心の健康のちょっと不思議な関係性の話をしてみたいと思います。
仕事柄、今まで心の病気を抱えた数多くの患者さんに関わってきました。そこで学んだことの一つは、“心の病気”=“心が不健康”という訳ではないということです。
心の病気を抱えて生きていくのは、もちろん簡単なことでは無いのですが、だからといって必ずしもその人の心が不健康という訳ではありません。逆に、心の病気が無いからといって、必ずしも心が健康だというわけでもありません。では、心の病気と心の健康は、一体どのように関係しているのでしょうか?
まずは心の病気と心の健康とは何かということを簡単に紹介したいと思います。
心の病気:
心の病気とは、思考や感情、そして行動に異常や障害が生じることで、日常生活や社会生活に支障をきたす状態のことを指します。心の病気には、うつ病、不安障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)など色々な種類があり、医学的な診断基準に基づいて、専門家によって判断されます。
心の健康:
次に、心の健康とは何でしょうか?案外、“心の健康”の定義づけは、“心の病気”の定義づけより難しかったりします。というのも、心の病気の診断基準は存在しますが、心の健康度を測る診断基準は存在しないからです。でも一般的に言えば、健康な心とは、自分自身や他者、環境に対してポジティブな感情や態度を持ち、色々な状況に適切に対処できる状態のことを指します。心の健康には、自己肯定感やストレス管理能力、そして社会的支援などが大きく関わってきます。
心の病気と心の健康:
では、心の病気と心の健康は、どのように関係しているのでしょうか?一般的に、心の病気があれば、心の健康度が低く、心の病気がなければ、心の健康度が高いというように、心の病気と心の健康は、同じスペクトラムにあるものと考えられがちです。しかし、これは必ずしも正しいとは言えません。というのも、心の病気と心の健康が、異なる要因や要素によって決まるからです。
心の病気は、遺伝や生物学的な要因、心理的な要因、社会的な要因など、さまざまな要因の相互作用によって発生します。それに対し、心の健康は、自己肯定感や自己効力感、ストレス管理や社会的支援など、さまざまな要素のバランスによって決まります。心の病気の要因と健康な心の要素は、必ずしも同じでは無いので、心の病気の要因と健康な心の要素を同時に持つことが可能ということです。
例えば、不安障害を持っている人でも、自分の価値や能力を認め、困難な状況に対処する方法を学ぶことにより、心の健康を高めることができます。逆に、心の病気を持っていない人でも、目的を持たずダラダラとした生活を送ることにより、心の健康を失うことがあります。このように、心の病気と心の健康は、別のスペクトラムにあるものと考えることで、より多様な視点から、自分や他者の心の状態を理解することができます。
今回のブログでは、心の病気と心の健康について少しお話させていただきました。心の病気を抱えて生きるのは、もちろん簡単なことではありません。けれども、だからと言って、必ずしも“心の病気”=“心が不健康”ではありません。心の病気があろうとなかろうと、自分の人生の目的を探究し、信頼できる人間関係を築くことにより、幸せで意味深く、満たされた人生を過ごしたいものですね!