映画の好みで脳のタイプがわかる?

みなさんの好きな映画のジャンルって何でしょうか?

アクション映画?スリラー映画?それともコメディ映画?みなさんそれぞれ映画を観る時は大体このジャンル、みたいなものがあるかと思います。

では、何でそのジャンルが好きなのでしょうか?

これは、まあ少し答えが出づらい質問かと思います。何で好きなの?と聞かれても、まあなんとなく好きだから、というような曖昧な理由になってしまいがちです。

でも最近の脳科学の研究によると、どうやら脳のタイプが映画の好みに関わっているかも、ということがわかってきました。これはドイツのマルティンルター大学で、最近(2024年の夏)発表された研究で、私たちの映画の好みと脳の感情反応の間にどんな関係性があるかを調べたものです。

この研究では、まず被験者に自分の好きな映画のジャンルを選んでもらい、その後fMRIでその被験者たちの次の2つの脳内感情反応について調査をしました。
1. 扁桃体:これは脳の中にあるアーモンド型の器官で、主に恐怖や不安を処理する役割を持っています。扁桃体の活動が過剰になると、全体的な不安感が増し、ビビリ感が高まります。不安障害やうつ病、もしくはPTSDの方に多いですね。逆に扁桃体の活動が欠乏すると、不安感は減るが、他人の感情表現が読めなくなり、人間関係に問題が生じます。自閉症気味の方に多いとされています。
2. 側座核:これはドーパミンなどを使ってノリノリ感を管理する脳器官で、喜び・満足感・意欲などを処理する役割を持っています。特定の刺激(ギャンブルやお酒)に対して、側座核が過剰反応をしてしまうのが、依存症ですね。逆に側座核の反応が極端に鈍ると、重度のうつ病や統合失調症のように、外部からの刺激に無反応になってしまいます。

そして、この研究の結果は次のようなものでした。

- アクション映画とコメディ映画を好む人は、扁桃体と側座核の活動が高め=ビビり度↑+ノリノリ度↑
- スリラー映画・犯罪系映画・ドキュメンタリーを好む人は、扁桃体と側座核の活動が低め=ビビり度↓+ノリノリ度↓

なんだか、しっくりくるような、こないような結果じゃないですか?アクション映画が好きな人って、あんまり驚かない性格だから、激しいアクションシーンを観ることによって刺激を得るのかと思ってましたけど、逆にビビリ度が高かったんですね。そして興味深いのが、そのビビることに喜びを感じる脳を持っているということです。コメディ好きも同じ系統の脳というのも、なかなか面白いですよね。意外な展開に思わず笑ってしまうんでしょうか。言われてみれば、周りでもアクション映画とお笑いが好きな人は良くいるような気もします。逆にスリラー映画・犯罪系映画・ドキュメンタリー好きな方は、派手なアクションやお笑いシーンよりも、じっくりと映画のストーリーにのめり込むことに、喜びや満足感を得るのかもしれません。

個人的には、ホラー映画好きの人の脳のことも知りたかったのですが、ホラー映画が好きという被験者が少なすぎて、この研究からは排除されてしまったそうです。残念。

Zwiky, E., König, P., Herrmann, R. M., Küttner, A., Selle, J., Ptasczynski, L. E., Schöniger, K., Rutenkröger, M., Enneking, V., Borgers, T., Klug, M., Dohm, K., Leehr, E. J., Bauer, J., Dannlowski, U., & Redlich, R. (2024). How movies move us – movie preferences are linked to differences in neuronal emotion processing of fear and anger: an fMRI study. Frontiers in Behavioral Neuroscience, 18. https://doi.org/10.3389/fnbeh.2024.1396811

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